季節をめぐる【立春の習わし】

季節をめぐる【立春の習わし】

春の訪れ。
 

立春は春のはじまりであると共に、二十四節気においては最初の節気

新しい1年がはじまる日として「新年」でもありました。この日が起点となり、節分をはじめ、雑節にある「八十八夜」「二百十日」「二百二十日」なども数えられています。

 

「はじまりの日」ー立春と旧暦の元旦ー

 

立春は旧暦で言う「新年」と思われている方も多いですが、実は別の暦によって成り立っている日。

 

 

二十四節気は太陽の動きに基づき表されており、毎年、国立天文台が発表しています。一方、「旧暦」は月の動きに基づいた「太陰太陽暦」を暦としています。太陽の動きと月の動きは同じではないため、昔から「同じ日」に「新年」を迎えることは、数十年かに一度しかありません。

数十年に一度、「立春」と「旧暦」が重なる日に新年を迎える年は「朔旦立春(さくたんりっしゅん)」や「立春正月」と呼ばれます。

 

 

今でも、旧暦の元旦に旧正月を祝う文化が残っている国々は多くあります。中国の「春節(しゅうせつ)」をはじめ、韓国、ベトナム、シンガポール、インドネシア、マレーシアなど、アジアの多くの国々ではそうした伝統が残っています。そして、2つは「1年の始まりの日」「春のはじまり」として、世界各地でお祝いの伝統行事が行われます。

欧米では、立春の日「生後40日のキリストが聖母マリアとともに神殿を訪れた日」として祝い、クリスマスシーズンの終わりとしてクリスマスツリーを焼く習わしがあります。その他、春の訪れを祝う行事・文化は多くあり、世界的にも2月はお祭り行事が多い月として知られます。

日本はアジア圏では珍しく、取り分けて旧正月や立春を祝うことはないですが、旧正月をお正月としていた時代には、立春と旧正月の時期が近いことから「迎春」「早春」「新春」と言われる言葉が生まれ、新暦となった現代でも、年賀状に「新春」「迎春」と書く名残がのこります。

 

また、先述に記したように、二十四節気は毎年、国立天文台が発表しているように重要視されており、日本でも(祝日にはなりませんが)「春のはじまり」は全国各地の神社では立春祭が行われたり、おめでたいイベントが開催されています。

 

 

それでは、【立春の習わし】を見ていきましょう! 

 

 

1. 「立春大吉」を玄関に貼る 

  
新しい年の始まりである立春の早朝に「立春大吉」と書かれた厄除けのお札を門に貼る習慣があります。「立春大吉」は縦書きにすると左右対称であり、裏から見ても「立春大吉」と読むことができます。万が一、鬼が家に入ってきても、家の外から見ても、中から見ても、見える文字は「立春大吉」。そのことから、「まだ家の外だったのか」と勘違いして、外に出て行ってしまうという伝わり、厄除けとして使われるようになったと言われています。風習にある鬼払いの中ではとても面白い発想になります。

「立春大吉」の御札は、頒布している神社やお寺もありますが、自分で作ることもできます。紙と筆ペンを用意して、無病息災・開運厄除けを願いながら、心を込めて縦書きで「立春大吉」と書きましょう。

 

2.立春朝搾り

 

立春朝搾りは、立春のお祝いのために作られる節分の夜から一晩中、もろみを搾り続け、立春の早朝に搾りあがったばかりの生原酒を瓶に詰め、無病息災を願い地元の神社でお祓いをしてもらった、とても縁起の良いお酒です。

 

 

3.若水を飲む 

 

若水は、元旦の朝一番に井戸から汲んだ一年で最初の水のこと。元は宮中において、立春の日に主水司が天皇に奉じた水のことを意味しました。現在は元日の行事として一般に浸透しています。

一年で一番初めに汲まれた若水は、健康や豊作など幸せを招く水と言われてきました。

 

4.立春生菓子

 

立春の朝に作る和菓子は「立春生菓子」と呼ばれ、その日のうちにすべて食べきると縁起が良いとされます。

 

代表的な種類としては、「立春大福」と言われる大福もち。小豆や黒豆を使った豆大福も人気です。小豆や餅には、けがれを祓う効果があると言われ、餅の丸い形から、物事を丸く収めるという意味があり、お祝いには良く用いられます。

他には、季節を感じるうぐいす餅やさくら餅などが挙げられます。四季のうつろいや花鳥風月を表現した練り切りなどの上生菓子は、日本らしい華やかさが詰め込まれ、お祝いにはぴったりです。 

 

◆「福茶」を飲もう◆

また、和菓子のお供には、立春の福を招くとされる福茶がおすすめです。

節分で余った炒った大豆=「福豆」を使い、簡単に作ることができます。

 

●「福茶」のつくり方●

 

福茶の材料(湯のみ1杯分)

福豆……3粒(豆まきの豆。香ばしく炒ったほうが美味しくなります)

塩昆布、または昆布の佃煮……適量

梅干……1粒(種をとっておきます)

熱湯……180cc(お好みで緑茶でもOK)

  

 

5.立春豆腐

 

古くから節分と立春に豆腐を食べると縁起がいいといわれています。

 

豆腐は節分で撒いた豆と同じ大豆から作られており、大豆は米と同じエネルギー源からできていると考えられているため、病や災いを祓い、更にその豆を食べることで力をいいただけると言われていました。
豆腐の白の色には、節分に食べるとさまざまな邪気を払い、立春に食べると立春大吉豆腐と呼び、健康を体内に呼び込み幸福になるといわれています。

節分と立春に食べる時は「白い色」のまま食べるのがいいといわれています。お醤油ではなく、塩でいただきましょう。

 

 

6.恵方参り


 

「恵方参り(えほうまいり)」とは、新年に当たる立春に、その年の恵方の方角にある神社仏閣へ行ってお参りすると良いとされています。

通常神社では願い事はしないものですが、この恵方参りの時だけは特別で、その年の願い事を一つだけお願いすることができます。 

 

▼恵方については【節分の習わし】をご覧ください。

 

   

 

◆運気が切り替わるタイミング◆

 

立春を迎えることは、新年を迎えるのと同じこと。

新暦の現代には元旦を迎えるにあたり、大晦日がありますが、立春には節分があります。運気が切り替わるタイミングでもありますので、今一度、生活を整え、節分でしっかりと厄を落として、立春を迎えましょう。

 

 

 ①身の回りを清掃する

年末の大掃除のように、身の回りの清掃を行って、新年を迎えましょう。

自宅に貯め込んでいた古いものは処分して、窓を開けて空気を入れ替え、新しい空気を家の中へと取り込みましょう。特に邪気が入りやすい玄関は念入りに掃除し、窓やベランダを整えて風の通りをよくしましょう。


②新しいものを身につける

運気が切り替わるタイミングには、新しいものを取り入れることでよい運気が舞い込んでくると言われます。自分の願いに応じてこの機会にアップデートしてみましょう。金運を上げたいならば財布。新しい出会いなら腕時計など。高価なものでなく、食器やタオル。口紅などの消耗品でも大丈夫です。

こうした記述はお正月の習慣には無いので、立春ならではの開運法になります。



③新しいことをはじめる

これまでの運気をリセットして刷新できる機会なので、何か新しいことを始めるのも良いとされています。
新しい1年をはじめるのにふさわしい気分転換や心機一転できるような思いではじめていきたいですね。

 

④旬のものを食べる

旬のものを食べることは、私たちの身体にとって、とても理に適っていることと言われます。
「春は苦み」と言われるように、苦みのある春の山菜を食べることは冬の間に体内にたまった老廃物や脂肪を排出し、春先の気候にあった体にしてくれる大切な要素となります。
立春の時期の代表は「ふきのとう」。早春に雪の中から小さな頭を出すふきのとうは、独特の芳香とさわやかな苦みがありますよね。魚では白魚(しらうお)、鰆(さわら)、鰊(にしん)がなどが旬の魚になります。旬の食材を食べ、心も体も豊かに季節を楽しみましょう。

 

 

 二十四節気は立春を境に、第一番目にもどり、七十二候も同様に第1候へ。
まだまだ寒い日が続きますが、少しづつ陽が長くなるのに気が付き、地面に緑の伊吹を感じはじめています。

今年もまた、暮らしを楽しむために、季節がめぐることに感謝し、春を祝いましょう。
そうした【習わし】の中で、暮らしにメリハリを付けていくことは、昔から積み重ねてきた人々の知恵という気がいたします。

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