季節をめぐる「正月の習わし」

季節をめぐる「正月の習わし」

行事と食事の結びつき

季節折々の行事やお祝いの日に食べる特別な料理は、日本文化・日本の風土を象徴するものです。

行事食には家族の幸せや健康を願う意味が込められ、”おせち料理”のように地域の特色によって違いがみられる場合もあります。それぞれ旬の食材を取り入れたものが多く、季節の風物詩の1つ。

本来、年中行事は「神様を呼び、ご馳走を捧げる日」として「ハレの日」とも呼ばれ、普段の食卓にはないご馳走を並べて日常(ケの日)とは区別してきました。食べる物だけではなく、着る物、室礼(しつらい)なども日常と非日常を区別してきました。

また、そうしたお祝い行事だけでなく、農耕民族であった日本人にとって、季節の変化は稲作を中心として目安とし、その目安となる日に行事を行うことで、収穫に感謝します。
季節の変わり目は体調を崩しやすいため、雑節や八節などで取り入れられている「食の知識」(「冬至のかぼちゃ」や「土用の丑」のうなぎなど)を設けることで、体調を崩しやすい時期を賢く乗り切る人々が紡いできた知恵です。

 

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【お正月の食べもの】

 

1.おせち料理

 

おせち料理は現在ではお正月に食べることの多い料理ですが、「おせち」はもともと暦上の節句を指し、季節の変わり目に祝い事を行う「ハレの日」に食べる料理でした。

本来、おせちは歳神様へのお供えとして作られるものですが、そのほかにも様々な意味があります。

・神様にお供えするものを一緒に食べることで御利益にあずかる
・神様を迎える際にせわしくしない
・台所を使わない(煮炊きをしない)

 

・おせちの食材

おせち料理は沢山の食材が使われており、(地域やご家庭によりますが)20〜30種類用意するのが一般的とされています。また、品数は偶数の場合2で割れてしまうことから、昔から縁起が良いとされる奇数にするとよいと言われています。

 

 

おせちは「祝い肴」「口取り」「焼き物」「酢の物」「煮物」の5種類に分けられます。

 

「祝い肴」


祝い肴とは、その名の通り祝い場で酒の肴として用意され、「祝い肴三種」として一品一品に願いが込められています。
関東では「数の子」「黒豆」「田作り」、関西では「数の子」「黒豆」「たたきごぼう」の三種が一般的です。

数の子・・・子孫繁栄、健康や長寿
黒豆・・・まめに働けるように。黒色は邪気を払う色
田作り・・・豊作を祈願。(イワシは畑を耕す肥料として使われていたため、田んぼが豊作になるといわれていた。)尾頭付が縁起がよい
たたきごぼう・・・家族や家業が地に根付いて繁栄する

 

「口取り」


「口取り」は「口取り肴」を意味しています。見た目や色が華やかで甘みのあるものが多いです。お祝い事では最初に提供されます。

かまぼこ・・・紅白の紅は「慶び」「魔除け」、白は「神聖」「清浄」を表します。箸休めにもぴったりなあっさりした味わい。
伊達巻・・・学業成就(巻物を連想させることから)
栗きんとん・・・金運上昇。(栗は山の幸を代表し「勝ち栗」と呼ばれ、豊かさを表す食べ物。
昆布巻き・・・不老長寿や子孫繁栄(「よろこぶ」「子生」。)
錦卵(錦玉子)・・・金運上昇。

 

「焼き物」


おせち料理の定番。海鮮の食材が多く並びます。


鯛(タイ)・・・「めでたい」と縁起の良い魚(恵比寿様が持っている)。祝い事に使われています。

鰤(ブリ)・・・「出世魚」とされ、成長とともに名前が変化する魚。出世を願う人にとっては1年の初めに食べると良い。
海老(エビ)・・・長寿祈願(腰が曲がるほど長生きをする)
蛤(ハマグリ)・・・良縁。(貝同士がぴったりくっつくものは一つしかないことから)

 

「酢の物」


おせち料理の定番。


紅白なます・・・「根を張るように」(祝いの水引き(みずひき)を連想させます。
酢れんこん(酢蓮)・・・見通しの良い未来(穴から先を見通せることから。)
菊花かぶ・・・繁栄、健康。(祝い事に使われる菊の花)

 

「煮物」

筑前煮・・・家族が仲良く暮らすことを表しています。
手綱こんにゃく・・・良縁や夫婦円満
くわい・・・突き出た芽から「芽出たい(めでたい)」。立身出世。長寿
里芋・・・子孫繁栄。家族円満。
たけのこは・・・立身出世。幸運を伸ばす。

 

おせちの重箱の詰め方

 

おせちの重箱には、「めでたさを重ねる」という意味があります。
近年では使用されている重箱は三段重が一般的ですが、正式には四段重が基本です。地方や家庭によっては五段重にするところもあります。
お重は上の段から「一の重」「二の重」「三の重」「与の重」(四は死をイメージを避けるため「与」の漢字があてられています。)「五の重」となります。
各段ごとにおせち料理を重箱に詰めるときは、お重ごとに詰める料理が決まっており、それぞれ、五、七、九の奇数の種類を詰めると縁起がよいとされています。奇数は吉数とも呼ばれ縁起が良いためです。

 

五段重の詰め方

 

与段重の詰め方

 

 

三段重の詰め方

 

 

近年では、ご自宅で作るだけでなく、気軽にお取り寄せしたり、様々な選択支が広がったことで、お正月の食卓も彩りやすくなりました。家族の好みや流行も取り入れられ、洋風おせちや中華おせちなど、おせち料理も多彩に変化しています。特徴はそれぞれですが、「おせち」という文化はそのままに、先人の知恵や風習を大切に。時代にあったお正月の暮らしと共に、日本の食文化を存分に楽しんでいただきたいです。

 

2.餅 

 

古くから農耕民族である

日本人にとって「ハレの日」の食べ物!お餅

 

日本では文化形成の根源に稲作があり、米は神聖な作物とされてきました。それを搗き(つき)固めたお餅には米のパワーが凝縮されているので、昔からお餅を食べると力がつくと考えられてきました。
お正月にお餅を食べることには、そこに宿った年神様の魂を頂戴し、新年の魂を授けていただくという意味があります。
本来、歳神様の依り代となるのは、鏡餅と言われています。

 

 

 鏡餅 


鏡餅という名前は、昔の鏡の形に似ていることから、その名がつきました。鏡には神様が宿るものとされ、そこから鏡餅は年神様のお供えとして飾るようになりました。丸い形は家庭円満、重ねた姿は一年をめでたく重ねるという意味が込められています。

松の内(1月7日)を過ぎて、年神様を見送り、自然の恵み(歳神様は豊作の神)からできた鏡餅を食べ、その霊力を分けていただいて、1年の無病息災を願います。その行いは「固いものを食べ、歯を丈夫にして、長寿を祈る」とい歯固めと言われる呼ばれる行事に繋がりました。

固く乾燥した鏡餅は刃物で切ることは切腹を連想させて縁起が悪いとされ、木槌(きづち)で細かく割ります。年神様の依り代であったお餅ですから、丁寧に扱いましょう。

 

 雑煮 

お正月にお雑煮を食べるの歴史は古く、始まりは平安時代だといわれています。
豊作を祈り年神様に供えた餅や里芋、にんじん、大根などを、その年の最初に井戸や川から汲んだ「若水」を新年最初の火で煮込み、元旦に食べたのが始まりといわれています。雑煮の語源は「煮雑ぜ(にまぜ)」で、色々な具材を煮合わせたことからきています。
年神様の魂が宿る丸餅が本来の形ですが、餅を手で丸めると寒い地方では餅の中に気泡が入り、餅が割れやすくなります。
そこで、関東では圧力をかけて気泡を押し出すのし餅を用いるようになりました。のし餅を切り分けると当然角型になるので、関東では角餅。関西では丸餅と地域性があります。
角餅をお雑煮にするときは、焼いて入れることが多く、焼くと膨らんで角が取れます。そうすると形が丸に近づくので、本来の意味を持つと考えられました。

 

そうした、

お料理を食べるのに大切にされている「祝い箸」について ご紹介。

 

祝い箸 

祝い箸とは、柳などの白木の両側を細く削った箸で、お正月や婚礼といったお祝い事の食事で用いられます。

 

祝箸の使い方

祝い箸の両側が細いのは片側を自分が使い、もう片側を神様が使って、共に食事をするという考え方に基づいています。晴れの日のお祝いの食事なので、神様にも召し上がっていただくというわけです。

お正月で使用する時は、大みそかに神棚に供え、松の内のあいだ使います。(使った祝い箸を各自きれいに洗って乾かし、箸袋に戻して使い続けます。)
縁起物の祝い箸ですので、使い終えた祝い箸は、1月15日の小正月に、「どんど焼き」「とんど」など、正月飾りや書き初めを燃やす行事に持参して、一緒に燃やすのが良いでしょう。

 

 

お正月のおせちやお雑煮だけでなく、行事食には、その土地の風土や地域の習わしがあり、その土地土地の季節に基ずく文化が溢れています。

行事を楽しむと共に、季節の節目やお祝いの際には、日本ならではの豊富な食文化を楽しんでくださいね。 

 

 ▼【正月の習わし】について

▼【お正月事始め】について

 

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