お正月は、日本の行事の中で最も古くから存在するものと言われています。日本の行事・習わしの中でも、特別に大切にされてきた文化と言えます。
お正月の「正」と言う字には、年の【初め】、年を【改める】という意味が込められています。昔は「正す月」として、1月を通して「正月」としていました。
【お正月事始め】から半月をかけ、家内を掃除し、整え、お飾りや歳神様の依り代、お供えを準備しました。そして、新しい歳神様を家族そろってお迎えし、祝うための大切な日となります。
古来より、初正月が特別に扱われるのは、初めてのお正月ということだけでなく、赤ちゃんにとって生まれて初めて歳を重ねる日と考えられていたからです。
現在の一般的な年齢の数え方は「満年齢」ですが、昭和24年頃までは「数え年」という数え方が主流でした。
「満年齢」とは、生まれた日を「0歳」として、次に誕生日を迎えた日に「1歳年を取る」という数え方になります。
一方、「数え年」では、生まれた日を「1歳」とし、「お正月を迎えた日に1歳年を取る」という捉え方をするため、当時は初正月が誕生日の意味でも捉えられていました。初正月では「2歳の誕生日」ということになります。
◆お正月飾り◆
初正月を迎える赤ちゃんはお祝いとして、男の子には、健やかでたくましく成長してほしいという願いを込めて「破魔弓」、女の子には魔除け、厄払いのために「羽子板」を飾る風習があります。
古来より、年末年始や節句などの季節の変わり目に「邪気祓い」や「厄除け」の行事が多いのは、この時期に『鬼門(きもん)』から鬼(邪気)が出てきて悪さをするため、病気になったり災厄が起こったりすると考えられていたからです。
そこで、生まれて間もない赤ちゃんが無事にその時期を越せるように、初正月に羽子板や破魔弓を贈り「子供のお守り」とするようになりました。
破魔弓の由来はいくつかありますが、古来より弓矢には霊力がさとると言われ、古いものであれば飛鳥時代にさかのぼり、お正月には弓で的を射る「射礼(じゃらい)」や「大射(たいしゃ)」と呼ばれる儀式が行われていたと伝えられています。また、平安時代になると、宮中で「追儺(ついな)」と言われる「悪魔退治の儀式」が行事として盛んに行われるようになります。
追儺で使用する道具である「ハマ(標的)」、「ハマ矢」、「ハマ弓」の「ハマ」の部分に、鬼や悪魔を「破る」という意味で「破魔」という字が当てられたのが破魔弓や破魔矢の由来だとされています。
鎌倉時代になると破魔弓は小型化し、武家では男児の初正月飾りとしたり、縁起物として贈答にも用いるようになりました。そして、そうした風習は庶民の間にも広まり、今日でも破魔弓は男の子の「魔除け」や「厄祓い」のお守りとなり、お正月や5月の「端午の節句」に飾られるようになったのです。
破魔弓は母親の実家(祖父母)から贈るのが一般的とされています。
近年は結納をしない夫婦も増えていますが、昔の日本では、結婚には嫁ぎ先の家が結納金を、嫁ぐ家が嫁入り道具を用意するのが一般的な習わしでした。
その為、破魔弓以外にも、お宮参りの晴れ着や雛人形、鯉のぼりなど、子どもの成長をお祝いするお飾りのほとんどは嫁入り道具として扱われていたのです。
◆時代の変化と共に◆
近年では、核家族化やライフスタイルの変化が進み、しきたりにこだわりすぎず、柔軟に考える親御さんが増えています。
両家でお金を出し合うケースもあれば、男側が用意することもありますし、両親に頼らず、自らがお金を出して購入するケースもあります。
日本の風習に、毎年12月13日には、新年の歳神さまを迎える準備を始める日を『正月事始め』が雑節として決められており、門松やしめ縄を用意したり、羽子板や破魔弓などの正月飾りを飾ったりと、お正月の準備をはじめます。
そして、1月15日の小正月(こしょうがつ)までの約1ヵ月の間、飾るのが一般的です。
◆雛人形や五月人形と一緒に飾る正月飾り◆
地域やご家庭によって、五月飾りと一緒に飾る方もおられます。
そうした場合に、「端午の節句まで出しっぱなしにしていてもいいですか?」というお問い合わせがよくあります。
基本的に、季節のものを飾りっぱなしにするのは良くないとされていますが、縁起物ですので一年中飾りっぱなしにしても問題はないとされています。
しかし、一年中飾るという意味ではない場合、やはり節目に合わせて、そのつどお飾りを飾ったり、片づけたりすることが望ましいと考えられます。
本来、その時期の習わしや節句の本質は、その季節の生活を整えること・生活を切り替えていくことを軸に考えられているからです。
その時々の文化を感じながら、あらためて家族や自分自身の身体を気遣ったり、生活を見直すタイミングとして過ごしていただきたいと思います。
破魔弓を何歳まで飾るかについては、特に決まりはありません。
昔は、「子どもが成長するまでのお守り」として飾っていたので、現代の「成人式」にあたる「元服(げんぷく)」を行う15歳まで飾るのが一般的でした。
現代でも、元服の年齢に合わせて15歳まで飾るというご家庭もありますし、成人式を行う18歳まで飾るというご家庭もあります。それ以外には、学校生活の節目や七五三などの行事を節目と考えるご家庭もあります。
いつまでという決まりがないので、「その人の成長お守り」と考え、成人した後や結婚してからも飾り続ける方も多くおられ、縁起物や季節のお飾りとしても飾っていただけます。
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