二十四節気 第8番目
【夏至 】(げし)
一年でいちばん日が長く、夜がみじかくなる頃。
「夏に至る」と書くように、夏至を過ぎると、いよいよ本格的な夏の到来。
気温が上がり、暑さは日に日に増していきますが、これから徐々に日照時間は冬に向けて短くなっていきます。
太陽の力が最も弱くなる「冬至」は、ここから徐々に日が満ちていくという意味で、「太陽の誕生日」、太陽年の元旦とも言われ、太陽のエネルギーが最も力強く感じられる「夏至」はその祝福が最大限に達したと考えられていました。
古代の人々にとって「冬至」は作物も育たない寒さの中で太陽が閉ざされ、一年のうち最も夜が長い日として暗闇に包まれる「死にいちばん近い日」として。いっぽう「夏至」は、太陽の光が大地を照らし作物を育てることから、人々の生命の源と捉え、男女が出会い子孫が繁栄する、そんな人間の営みを司るものの象徴として崇めてきました。古代文明遺跡からは様々な太陽信仰を象徴する遺跡の発掘やペトログリフ(岩刻文字)が発見されています。
また、現代でも世界各地のでは、キリスト教が広まる以前の太陽信仰を元とした祭祀を行なう「夏至祭」の風習は多数存在しています。(キリスト教の祭りとして変化していったものも多くあります。)
各地のお祭りでは、形状や呼び名は違うものの、多くのお祭りは焚き火をシンボルとし、火を囲み踊る火祭りがメインとして行われます。花や作物が育つ生命の源として自然への感謝と共に、民族の発展や男女の出会い・祝福などを込めて行われています。
日本では、縄文時代の秋田県大湯環状列石(ストーンサークル)や日時計などが遺跡として残されている他、古くから自然崇拝の文化・歴史を持つため、多くの神社やお宮、お寺には様々な伝説が残されています。
伊勢神宮で有名な天照大御神は太陽神であり、スサノオノミコトは海神・嵐神として。ツクヨミは月神など、神は自然の万物に司るとされてきました。
日本の「夏至祭」
二見興玉神社から見える「夫婦岩」は、夏至の前後だけ岩と岩の間から朝日が昇ります。夫婦岩の間から、太陽のエネルギーが最も強い夏至の日の出を浴びながら、海に入り身を清めようという「禊(みそぎ)」の行事が行われます。
その他には、「夏越の祓(なごしのはらえ)」と言って、6月の晦日頃、全国各地の神社では<茅の輪くぐり>も行われています。
大祓(おおはらえ)は、イザナギノミコトの禊祓(みそぎはらい)をルーツとする神事であり、季節の節目に心身の穢れや厄災を祓い清める儀式でした。
年に2回、(「夏至」と「冬至」前後に)「夏越の祓(なごしのはらえ)」 と 「年越大祓( としこしのおおはらえ)」が行われます。
日本にとって、特別格の宮・伊勢神宮に祀られる神が天照大御神(太陽神)であるのに対し、夏至(太陽が満ちている日)のお祭りが世界各地に比べ少ないのは、梅雨が関係していると言われています。
6月の半ばを過ぎ全国的に本格的な梅雨に入ります。長雨が続き、日照時間の長さを感じるタイミングでないことなどが理由とされています。
そんな中でも、季節の節目のリフレッシュとして、暑さに慣れない身体は心身ともに疲れやすくなっていることから、「夏越の祓(なごしのはらえ)」や「土用の丑」などあります。夏を過ごしていく中で心身を清め、身体を整えていく文化を節目に添えておく。それは日本の土地が育んだ知恵だと思えるのです。
次回の二十四節気は「小暑」です。